住宅の過ごしやすさに大きく影響するのが「断熱性」ですよね。
高気密・高断熱の家なら、外の空気を通しにくいので、夏は涼しく冬は暖かい家が実現できます。そこで、どんな断熱材を導入するかは非常に重要です。
コストや機能面を比較しながら、マイホームにぴったりの断熱材を見つける必要があります。
代表的な断熱材の種類として 木質繊維系 ・ 無機繊維系 ・ 天然素材系 ・ 発泡プラスチック系 の4種類の素材について、メリットデメリットや特徴をご紹介します。
発泡プラスチック系
ポリスチレンやウレタンを使用した発泡プラスチック系断熱材です。
素材のバリエーションが豊かで、同じ発泡プラスチック系に分類される断熱材でも、価格帯や特徴に大きな違いがあります。
発泡プラスチック系の特徴
- 素材が軽く自由に形成しやすい
- 耐水性があり結露に強い
- 劣化が少なく長持ち
- 外張りと充填どちらの工法にも対応
- 耐火性が少なく燃えやすい
一般的にはポリスチレンを使用したものが多めで、発泡スチロールとほとんど同じ素材なので、重さが軽く施工が簡単です。
外張り工法と充填工法のどちらにも対応でき、場所を選ばず活躍。
自由に変形しやすいことから、どんな形の部屋にも隙間なく断熱材を敷き詰めることが可能です。
耐水性に優れていることから、結露にも強いだけでなく、耐久性が高く長持ちするのも大きなメリットだと言えます。
火に弱いのがデメリットで、燃えると有毒ガスが発生する素材もあるので、選ぶ際は慎重にご検討ください!
天然素材系
天然の素材を利用した天然素材系の断熱材です。
羊の毛を原料とした「ウールプレス」やワインの栓でも使用されている樹の皮を原料とした「炭化コルク」などが挙げられます。
天然素材系の特徴
- 体にやさしい
- 湿度を調整するのに優れている
- ダニなどの防虫効果がある
- 価格が高い
- 取り扱い業者が少ない
体にやさしい天然の素材を使用していることから、シックハウス症候群でも安心して過ごせます。
空気をためて断熱できるので、どちらも湿気を吸ったり放出したりして調整する調湿力に優れており、結露対策はバッチリ。空気には吸音する特徴もあるので、防音性も高めです。
また、自然の防虫効果があるので、ダニなどの害虫を寄せ付けにくいのも大きなメリットだと言えます。
無機繊維系
ガラスや砂などの鉱物を原材料とする無機繊維系の断熱材(グラスウール・ロックウールなど)です。
グラスウールはガラスが繊維状になったものが原料で、ロックウールは玄武岩などの石が原料。
どちらも燃えにくいので、耐火性は抜群です。
無機繊維系の特徴
- 価格が安く流通量が多い
- 燃えにくい
- シロアリなどの害虫被害に強い
- 湿気に弱く結露ができやすい
- 充填工法以外では設置できないことが多い
ロックウールよりもグラスウールは価格が安いため、日本での流通量が多いオーソドックスな断熱材だと言えます。
ガラスや石が原料であることから、燃えにくいだけでなく、害虫被害が少ないのも嬉しいポイント。
一方で、どちらも湿気に弱いことが大きなデメリットで、無機繊維系の断熱材を使用する場合は、必ず結露対策が必要になります。
充填工法以外では設置できないことが多いので、マイホームの施工方法を確認する必要があります!
木質繊維系
古紙や木材のくずなどを使用した木質繊維系の断熱材(セルロースファイバーなど)です。
環境評価が高い断熱材とも言われていて、ヨーロッパ地方のエコハウスでは普及率が高い断熱材です。
廃棄されたものをリサイクルすることが可能なので、人にも環境にもやさしい素材だと言えます。
木質繊維系の特徴
- 環境にやさしい
- 防音効果がある
- 結露が発生しにくい
- 価格が高い
- 施工できる業者が少ない
使用されなくなった新聞紙や木のくずを再利用した原料かつ隙間を作らない充填工法で施工するので、断熱材の密度が高いことがポイント。
断熱性だけでなく、防音効果も期待できます。
さらに、木質系の素材は、水蒸気を吸収するという特徴があることから、内部に結露が発生しにくいというメリットもあります。
ここからは、どんな人にどの断熱材がおすすめかをご紹介するので、断熱材の種類で迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
まずは、コスト面で種類を絞ってから、熱伝導率や耐湿性などの特徴を比較してゆきます。
コストを抑えるなら無機繊維系
とにかくコスト重視で断熱材を導入したいという方には、無機繊維系がおすすめです。
ガラスや石などを原料とした無機繊維系の断熱材は、流通量が多く断熱材の中で最も安いことからコストパフォーマンスが高め。
さらに、充填工法で施工するので、工法のみで比較してもコストを抑えやすいと言えます。
ただし、無機繊維系の断熱材は湿気に弱いため、湿度が高い場所や地域によっては推奨されていない可能性があります。
湿気対策が必要となるので、コスト重視で取り入れる方は、湿気対策シートなどの値段も考慮することが大切です。
暖熱の効果をより高めたいなら発泡プラスチック系
発泡プラスチック系は、他の断熱材と比べて低い熱伝導率を持っていることが特徴です。
熱伝導率が低いということは、外の冷たい(熱い)空気の影響を受けにくいということです。
室内を常に快適に保つ機能性で選ぶ場合は、発泡プラスチック系の断熱材が圧倒的におすすめです。
代表的な発泡プラスチック系の断熱材
- 押出法ポリスチレンフォーム
- ビーズ法ポリスチレン
- 硬質ウレタンフォーム
- 吹付け硬質ウレタンフォーム
- フェノールフォーム
外張り工法と充填工法のどちらでも施工でき、さまざまな価格帯や特徴から選べますが、素材によっては非常に高価になっているためご注意ください。
防虫や結露対策も完璧にしたいなら天然素材系
断熱性能だけでなく、防虫効果や結露対策までバッチリの断熱材が良いという方は、天然素材系がおすすめです。
羽毛や炭化コルクなど自然由来の原料を使用することから、体にやさしく持続力が長い防虫処理が施されているケースや素材本来に防虫効果があるケースが多め。
さらに、湿気を吸ったり放出したりして湿度を調節できる性能も持ち合わせていることから、結露対策もほとんど必要ありません。
ただし、 断熱材の中では、圧倒的にコストがかかるというデメリットがあります。
断熱材の原料となる天然素材は海外から輸入することが多く、高額な輸入コストも加算されるため、予算に余裕がなければ導入が難しいと言えます。
以上、代表的な断熱材について 簡単な説明をさせて頂きました。
しかし、
夏涼しく、冬暖かい家は、断熱材の種類で決まるわけではありません。
特別な工法で建てなくても、コストの安いグラスウールを断熱材に採用しても、断熱材について正しく理解をしたうえで、正しい施工方法であるなら、夏涼しくて冬暖かい家を建てることはできます。
それは裏を返せば、正しい施工方法でなければ、どんな特別な工法でもどんな特別な材料を使っても、夏涼しくて冬暖かい家を建てることはできないという事でもあります。
どんなに性能の高い断熱材でも、隙間なく施工しなければ断熱効果は驚くほど低下してしまいます!つまり、断熱材の種類よりも隙間なく施工するほうがはるかに重要なのです。
そして、結露対策をしっかりと行った上で、きちんと隙間なく施工されて、初めて 夏涼しくて冬暖かい家を建てることはできます。
家の暖かさは断熱材の種類で決まるものでは、決してありません。
「断熱材が〇〇だから暖かい」のではなくて、「しっかりと隙間なく施工されている=気密処理されているから暖かい」のです。
言ってしまえば、気密処理がしっかりできているなら断熱材は何でもいいと思います。
気密処理がしっかりされているのかを調べる唯一の方法が「気密測定」です。この気密測定をしなければ、その家の断熱性能を正確に測ることはできません。
しっかりと気密処理できているかどうか、で光熱費もかなり変わってきます。
気密測定値をC値と言いますが、目標は1.0以下で十分です。